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マーシャル諸島、カヌーをつくる学校 ― 自分たちが建てた校舎の前で、33人が卒業した

2025年11月28日、マーシャル諸島の首都マジュロで、33人の若者が修了証を受け取りました。女子14人、男子19人。この訓練を続けてきた団体にとって、過去最大の期です。

式が行われたのは、真新しい2階建ての建物の前でした。工房と事務所が入っています。同じ日、その建物のお披露目も行われました。

その建物を建てたのは、その日に卒業した若者たち自身です。6か月の訓練の実地作業として、自分たちが使う場所を自分たちの手で組み上げた。

Marshall Islands
Image by Peter Mellow from Pixabay

焼け跡から

建物が必要になった理由は、その2年ほど前に工房と事務所が全焼したからでした。

団体の名は「ワーン・アエロン・イン・マジェル」。マーシャル語で「マーシャル諸島のカヌー」という意味です。始まりは1989年、伝統的なカヌーの設計と、その建造の工程を一つずつ記録する事業でした。長老の造船職人たちが持っている技術が、記録されないまま消えかけていたからです。その記録事業に4年関わった人物が、1990年代の後半に、これを若者の訓練を行う団体として立ち上げ直しました。現在の代表です。

「では、小学校でやめた子は?」

この団体が誰を対象にしているかが、いちばん重要な点だと思います。

募集の対象は、小学校や中学校の段階で学校を離れた若者です。代表は、高校の段階でつまずいた子どもには別の受け皿がある、では小学校の段階でやめた子はどうなるのか、という趣旨を語ったと現地紙が伝えています。訓練生の多くがその層だ、とも。

この国で、その若者たちに手を伸ばしている組織は、ほぼここだけだといいます。彼らは行政の仕組みからも、安全網からも外側にいる。制度の穴に落ちた子どもたちを、制度の側が拾えていない。だから民間の小さな団体が拾っている、という構図です。

銀行口座の開き方と、帆の張り方

6か月の課程は、定員25人前後。内容は三つの層に分かれています。

生活の技能。時計に沿って働くこと。銀行口座を開くこと。社会保障番号を取ること。履歴書を書くこと。そして、困ったときに助けを求める方法。有資格のカウンセラーが2人常駐し、就職や進学の前に立ちはだかるものを一つずつ片づけていきます(代表自身もカウンセラーの資格を持っています)。

職業の技能。大工と電気工事。数学。そして繊維強化プラスチックの成形。カヌー、カタマラン、プロア——この団体の看板である船を、実際につくります。週に1回は、その船で帆走の実習に出ます。

学び直し。英語はボランティアが教え、理数系は教育機関が支援します。狙いは、修了後に短大の成人基礎教育課程へ進めるようにすること。前の期は修了生の多くがそこへ進んだので、今の課程にはその入学要件が組み込まれている、と代表は説明しています。「時代と必要に合わせて変える」という趣旨の言葉が現地紙に残っています。

ここで確認しておきたいのは、伝統的なカヌーが「文化を守るための展示物」として扱われていないことです。カヌーは、若者が食べていくための技能を身につける教材であり、同時に、その技能が生まれた場所の記憶でもある。文化の継承と生活の立て直しが、同じ作業台の上で起きています。

島で直せる船を

若者の訓練と並んで、もう一つの柱があります。外島のための船づくりです。

マーシャル諸島は、環礁が広い海に散らばる国です。同じ環礁の中でも、島から島へ人とコプラ(乾燥ヤシ果肉)を運ぶ手段が要る。燃料代は重く、政府の巡回船は何度も寄港しなければならない。

そこで団体は、排出ゼロの帆走船——カヌー、プロア、カタマラン——を島ごとの必要に合わせて設計してきました。進め方に特徴があります。船を届ける島から、熟練の大工を1人マジュロに招き、一緒に建造する。完成した船は島へ運ばれ、実際に使われ、その使い勝手が団体に戻ってきて次の設計に反映されます。

設計の条件は明確です。島で手に入る材料で、島で直せること。

対照的な例として語られるのが、外から持ち込まれたある双胴カヌーです。故障したときマジュロでは直せず、そのまま倉庫に置かれて、やがて誰も見なくなった。直せない船は、贈られた時点から数えて短い命しか持たない。だから一緒に建てた大工が島に1人いることが、船の寿命そのものになります。

もう一つ、配り方にも考えがあります。ある環礁には、カタマラン2隻とプロア1隻を届けました。1隻だけでは、共同体の中で取り合いになるからです。代表はこれを「1隻をめぐって争わせないように環礁を運営する」という趣旨で説明しています。ソーラー式の船外機についても、2年かけて実地のデータを集めているところです。

育てた人が、いなくなる

ここまでは、うまくいっている話です。けれど代表は、現地紙の取材にはっきりとこう認めています。

マジュロに招いて訓練した船大工が、その後アメリカへ移住してしまう。

これは個人の問題ではありません。国全体で起きていることの一部です。

2026年5月に報じられた米国政府の会計検査院の報告によれば、マーシャル諸島の人口は2011年の53,158人から2021年には42,418人へ、20%減少しました。当局は現在さらに減っているとみています。人々が国を出る理由として挙げられているのは、より賃金の高い仕事、教育、そして医療です。同国の当局者は、外島の経済的な制約が大きな要因だと述べ、報告書は「外島にはほとんど仕事がなく、常勤の職はたいてい教員か保健助手に限られる」と記しています。

結果として何が起きているか。教員、医療従事者、そして熟練の建設労働者が足りません。協定の資金でつくるはずの施設が、地元の有資格者を確保できずに遅れ、フィリピンやフィジーから人を呼んでいる。外島の学校には児童が10人を下回るところが現れ、教員不足のため複数学年をひとつの教室で教える方式が始まりました。アジア開発銀行は調査に対し、人口が減れば教育や医療を届ける費用が上がり、質が下がり、それがまた人を出て行かせるという逆転しにくい循環になると述べています。

つまり、この団体が大工と電気工事の技能を教えることは、そのまま国外で通用する技能を渡すことでもある。訓練が成功するほど、出て行ける条件が整う。皮肉に見えますが、これを「裏切り」と呼ぶのは間違っています。賃金と、病院と、子どもの学校。出ていく理由の一つひとつが、当人にとっては切実です。

だから、島で教える

この状況に対して、団体が出した答えが具体的です。

南端の環礁で、20人に船の建造と修理を教える。マジュロに呼び寄せるのではなく、島の中で教える。そうすれば、技能を持つ人の集まりが島に残ります。ドイツの援助機関の支援を受けて進められています。

マジュロは、多くの人にとって外島から出てきて現金を稼ぐ場所であり、渡航費を貯める場所でもあります。そこへ人を呼ぶということは、渡米の入口に立たせることでもある。教える場所を変えるという判断は、そのことへの応答です。

どこで教えるかが、誰が残れるかを左右する。船づくりの話でありながら、それは同時に、国のかたちの話でもあります。

測れないもの

この団体には、もう一つ抱えている難しさがあります。資金の出し手は、成果を数値で示すことを求めます。数学と英語がどれだけ伸びたか、工具をどれだけ使えるようになったかは測れる。けれど、自信や自己肯定感の変化はどう測るのか。それは当然の要求ではあるが、達成したものを測るのが非常に難しい場合がある——団体の副代表が、そう語ったことが記録されています。

資金は世界銀行の事業、各国の援助機関、財団などから来ています。継続は保証されていません。火事にも遭いました。それでも1989年から数えて37年、この団体は続いています。

祈りによせて

33人が修了証を受け取った日、彼らの後ろには、自分たちで建てた建物がありました。木を切り、釘を打ち、電線を通したのは彼らです。同じ手が、帆を張ることも覚えました。

その手はこれから、どこへでも行けます。マジュロに残る人もいるでしょう。外島へ帰って船を直す人もいるでしょう。アメリカへ渡る人もいるでしょう。どれも、彼ら自身が選ぶことです。技能は持ち運べます。そして技能を身につけた人は、どこにいても、自分の手で何かを直せる人になっています。

海の上の道は、行きも帰りも同じ道です。カヌーは、片道のために作られたものではありません。

島に残る人と、海を渡った人が、いつかまた交わりますように。そのときに交わされるものが、新しい未来の模索の始まりになりますように。そして、学校を離れた子どもたちを最初に見つける手が、この島々でこれからも続きますように。

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マーシャル諸島が平和でありますように

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参考・引用元

  • The Marshall Islands Journal「WAM graduates biggest group」(2025年11月27日)=現地の週刊紙。33人の修了と新棟の開設:marshallislandsjournal.com
  • The Marshall Islands Journal「The wonders of WAM」(2025年5月29日、Giff Johnson)=外島の船づくりと人材流出についての代表への取材:marshallislandsjournal.com
  • The Marshall Islands Journal「Girls nail it at WAM」(2025年4月17日、Giff Johnson)=訓練の内容と対象となる若者について:marshallislandsjournal.com
  • Island Times/Pacific Island Times「Population loss strains Micronesia, Marshall Islands economies」(2026年5月26日)=米国政府会計検査院の報告にもとづく人口減少の報道:islandtimes.org
  • Waan Aelõñ in Majel(実施団体の公式サイト)=沿革、訓練の構成、成果測定の難しさ。実施団体自身による発信:canoesmarshallislands.com

関連ページ

  • 星はいつもそこにある — 機器を持たず太平洋を渡った、パラオの航海カヌー:prayers-for-world-peace.net
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