ガーナ北部、ブルキナファソやトーゴと国境を接する上東州。年々厳しさを増す暑さのなか、ある大学の研究チームが、未来の住まいのヒントを「足元の土」に見いだそうとしている。セメントでもコンクリートでもない。この地に古くからある赤い土「ラテライト」を、現代の科学で鍛え直した日干しれんが——それが、涼しく、安く、環境にやさしい家をつくる鍵になるかもしれない。
「コンクリートの家」がもたらしたもの
近代化のなかで、世界中の多くの地域がそうだったように、ガーナでもセメントとコンクリートが「進歩した建材」として広まってきた。だが、その普及には見えにくい代償がある。セメントは製造の段階で大量のエネルギーを使い、多くの二酸化炭素を排出する。さらに、コンクリートの壁は熱をため込みやすく、日中の熱を室内に閉じ込めてしまう。上東州のような暑い土地では、扇風機やエアコンに頼らざるを得なくなり、電気代がかさむ。気温の上昇で壁にひびが入りやすいという弱点もある。
この課題に、土地の知恵と科学を結びつけて挑んでいるのが、ボルガタンガ工科大学の建設マネジメントを専門とするカリスタス・テンガン教授の研究チームだ。「Enhancing Traditional Building Materials(伝統的建材の高度化)」と名づけられたこのプロジェクトは、ガーナの環境科学技術革新省(MESTI)と、アフリカの科学助成の枠組みであるSGCIの支援を受けて進められている。狙いは、排出を減らし、暮らしのエネルギー効率を高め、地域に経済機会を生み、ガーナの「緑の建築」への道を開くことにある。
ココナッツの繊維が、土れんがを強くする
研究チームがまず取り組んだのは、従来の建材と伝統的な建材を科学的に比べることだった。ラテライトは、高温多湿の熱帯で生まれる鉄やアルミニウムを多く含む赤い土だ。これを集めて粉にし、固める材料を混ぜて乾かすと、れんがになる。チームの試験で意外な発見があった。ココナッツの繊維で部分的に補強した日干しのラテライトれんがが、最も高い圧縮強度を示したのだ。テンガン教授は、これが既存のラテライトれんがやセメントブロックを上回るエネルギー面の利点をもたらす、持続可能な選択肢になると語る。
土の壁には、コンクリートにはない「熱をためる力(熱容量)」がある。日中の暑さをやわらげ、室内を涼しく保つため、冷房に使う電気を減らせる。実際、ココナッツ繊維で改良したれんがは室内の熱を下げ、エネルギー需要を抑えたという。研究によれば、ラテライトれんがの建物は、仕上げに使う漆喰や塗料が少なくて済むぶん、1平方メートルあたりの製造時排出量がセメントブロックの建物より低く抑えられることも示されている。
チームは、伝統的な建材に現代の技術も組み合わせた。屋根にはソーラーパネルを載せて電気をまかない、人の動きや温度に応じて照明や冷房を調整するスマートセンサーを導入する。ボルガタンガ近郊ヨロゴウ村の「アサーズ・エコビレッジ」では、こうした技術が実際に電気の節約につながっているという。さらに、土れんがとセメントブロックの環境負荷を比べられる「ライフサイクル評価・カーボン計算ツール」や、土の壁がどれだけ冷房を助け電気代を下げるかを示す「エネルギー・シミュレーションツール」も開発中だ。作り手や住民が、持続可能な選択の利点を目に見える形で確かめられるようにするためである。
もっとも、この取り組みが順調そのものというわけではない。テンガン教授自身が、率直に課題を語っている。一つは、設置の初期費用の高さ。そしてもう一つ、より根深い問題として、「伝統的な家は『貧しい人の建築』だ」という見方が今も残り、セメントブロックの家がむしろ豊かさの象徴とみなされていることがある。「人々の意識を変えることは、技術革新そのものと同じくらい重要なのです」と教授は言う。実際、調査に協力してくれた地域の人々の反応は温かいものの、新しい建材を実際に採り入れる段階には、まだ達していない。受け入れと理解は、これからの時間に委ねられている。
祈りによせて
進歩とは、新しいものを外から取り入れることだけを指すのではないのかもしれません。ガーナの研究者たちが見つめているのは、はるか昔からこの土地にあった赤い土と、暮らしの知恵でした。それを捨て去るのでも、懐かしむだけでもなく、科学の手で磨き直し、未来の住まいへとつなげていく——足元にあるものの価値を見いだし直すその営みは、世界のあらゆる土地にも通じる希望のかたちです。涼しい土の家で人々が穏やかに眠れますように。そして、自らの土地の知恵を誇りとともに未来へ手渡そうとするすべての人の歩みが、実りあるものとなりますように。
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参考・引用元
- SGCI Africa「Harnessing traditional materials for climate-smart development in Ghana」(2025年10月、テンガン教授インタビュー):sgciafrica.org
- SGCI Africa「Towards 2026: African innovations pointing to what comes next」(2026年1月):sgciafrica.org
- News Ghana「Bolgatanga Technical University Wins Grant For Climate Change Project」(プロジェクト概要・助成額):newsghana.com.gh
- Frimpong, T.A. et al.「Life Cycle Embodied Carbon Evaluation of a Two-Bedroom House Construction in Ghana」(2024、土れんが対サンクリートの定量比較):papers.ssrn.com