ボリビアのアンデス高地、標高3,700メートルに広がるウル・ウル湖。かつては数百、いや最盛期には20万羽近いフラミンゴが羽を休め、澄んだ水と豊かな草に囲まれた、いのちあふれる湿地だった。だが今、その水は黒く濁り、強い悪臭を放ち、わずかに残った鳥たちも日に日に姿を消している。この「母なる湖」を、見捨てずに癒そうとする先住民の若者たちがいる。手にしたのは、最先端の機械でも巨額の予算でもない。祖先が使ってきた一本の水草だった。
毒の流れ込む「母なる湖」
ウル・ウル湖は、ラムサール条約に登録された国際的に重要な湿地であり、7つの先住民コミュニティと76種の鳥たちの住処だ。けれど三つの脅威がこの湖を死に追いやっている。近隣のサン・ホセ鉱山などから流れ込む銀・金採掘の重金属(ヒ素、カドミウム、亜鉛、マンガンなど)、オルロ市からタガレテ運河を通じて運ばれてくる大量のプラスチックごみ、そして気候変動による水位の低下である。2018年の分析では、水は人間が口にできる限度をはるかに超える重金属を含み、その汚染は湖の魚からも検出されている。
湖のほとりで生きる人々の暮らしは、根こそぎ揺らいでいる。きれいな水を失い、土地を離れざるをえなくなった人も多い。残った人々の家畜や作物は、汚染された水を飲んで育つ。「私たちは自分の健康と命を、この状況にさらしている」と、湖畔のヴィト村に暮らすアイマラの女性ダヤナ・ブランコさんは語る。「いつか発症するかもしれない病気のことを考えながら、この再生の仕事をしているのです」。
抗議が届かなかった、その先で
2019年、これ以上は耐えられないと立ち上がったのが、湖畔に暮らす70人ほどの先住民の若者たち——その多くが女性だ。彼女たちは「ウル・ウル・チーム」を結成した。最初に頼ったのは、正攻法だった。法に救いを求め、抗議し、違法な採掘をやめるよう当局に求める非暴力のキャンペーンを組織した。だが、鉱山会社は買収と威圧で対抗し、行政からも色よい返事はなかった。今に至るまで、汚染源を断つ抜本的な対策は動かないままだ。
正面の扉が閉ざされたとき、若者たちは祖先の知恵を思い出した。ブランコさんは祖母に教わった。「トトラ」という在来の水草のことを。アンデスの湖に古くから自生し、祖先が家や舟を作り、家畜の飼料にもしてきた植物だ。このトトラには、根や葉に重金属などの汚染物質を吸収し、蓄える力がある——科学の言葉で「ファイトレメディエーション(植物による浄化)」と呼ばれる働きである。「自然のフィルターなんです。だから私たちは、ひと月だけ置いてみて、また戻って何が起きるか見てみようと言いました」。
ペットボトルの筏に、希望を植える
問題は、汚れた湖にどうやって苗を浮かべるかだった。そのまま入れれば沈んでしまう。そこで若者たちは、湖から拾い集めたプラスチックごみで浮き筏を作り、その上にトトラを植えた。最初の試作は小さく頼りなく、「そんなものは役に立たない、時間の無駄だ」と笑う村人もいた。それでも彼女たちは続けた。ひと月後、遠くから筏を見たブランコさんたちは息をのんだ。眠っていた灰色のトトラが、青々と緑に変わっていたのだ。汚れた水とつながり、生きて、働いている証だった。
スウェーデン大使館の支援で行った水質検査は、その手応えを裏づけた。トトラを置いた区域では、重金属による汚染が30%減っていたのだ。2024年だけで、チームはリサイクルのペットボトルから40の筏を作り、約600本のトトラを植えた。並行して、野菜を育てて売る共同菜園を広げ、活動を経済的に支える仕組みも整えていった。ブランコさんは2024年に国際的な環境団体から若手の再生リーダーとして表彰され、活動はさらに各地の支援とつながっている。「90%まで汚染を減らしたい」——それが彼女たちの願いだ。
魔法ではない、それでも
ただ、この取り組みを「奇跡の解決策」と呼ぶのは正しくない。トトラによる浄化はあくまで汚染を和らげるもので、毒を流し込む源そのものを止める根本対策ではない。汚染の低減は30%にとどまり、チーム自身がそれを「十分ではない」と率直に認めている。重金属を吸い込んだトトラを最終的にどう安全に処理するのか——植物による浄化が世界共通で抱えるこの難題も、まだ残されたままだ。鉱山由来の重金属汚染は依然として深刻で、魚からも検出され続けている。
それでも、確かな前進もある。プラスチックごみについては、湖へ流れ込む排水路に格子を設けて発生源で食い止める対策が効き、回収量は2021年の年間300トンから2025年には50トンへと大きく減った。源を断てば、汚れは確かに減らせる。その小さな成功は、いつか重金属の問題にも別の答えが見つかるかもしれない、という希望につながっている。
祈りによせて
「ウル・ウル湖は、かつて私たちが享受したすべてを与えてくれました。澄んだ水、動物たち、美しい眺め。今は失われ、それが私たちの希望でもあるのです」。ダヤナ・ブランコさんは静かにこう続ける。「もう二度と元には戻らないかもしれない。でも少なくとも、私たちの動物のため、人々のため、私たち自身のために、ほんの少しは良くできる」。元通りの楽園を取り戻せる保証など、どこにもない。それでも、絶望して立ち去るのではなく、祖先から受け継いだ草を一本ずつ植え続ける人々がいる。世界の片隅で灯されたその小さな希望に、私たちも静かに祈りを重ねたい。母なる湖が、いつかまた青さを取り戻す日を。
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参考・引用元
- Mongabay Latam「Uru Uru Team: cómo salvar con plantas un lago a punto de morir contaminado」(2025年2月22日):es.mongabay.com
- RFI(スペイン語)「La fitorremediación, técnica natural para limpiar las aguas del lago Uru Uru」(2026年1月):acento.com.do
- Ramsar条約「2025 Ramsar Wetland Awardees」:ramsar.org
- UN(ダヤナ・ブランコ氏 ECOSOC演説、2025年2月5日):sdgs.un.org
- Equator Initiative「Uru Uru Team」:equatorinitiative.org