モンゴルの草原では、いちばん大切な仕事のひとつが「何もしないこと」だという。家畜を入れず、草を食ませず、土地をひと季節まるごと休ませる。芽が伸び、根が張り、傷んだ地面が静かに息を吹き返すのを待つ。ゴビ砂漠の北、イフ・ボグドという標高4,000メートルの山のふもとで、遊牧民たちがこの古い知恵を新しい道具と組み合わせ、痩せた草原を蘇らせようとしている。 「休ませる」という、古い知恵 モンゴルでは国土の約7割を草原が占め、人口の半分近くが今も家畜とともに生きている。牧草地は誰か一人の所有物ではなく、皆で分かち合 ...