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「その時、加入しようと決めたんです」— ジンバブエの葬儀組合が、生きている人も支え始めるまで

ハラレの女性メリサ・カスさんの母親が亡くなったのは、家族が最も備えていなかった時だった。ジンバブエの葬儀は、食事や音楽をともなう盛大な見送りが慣習となっており、体面を保とうとするあまり借金を抱える遺族も少なくない。そこに現れたのが、地元の「葬儀組合」だった。大鍋と食料の袋を抱え、火まで熾してくれた。「その時、加入しようと決めたんです」とカスさんは振り返る。

弔いのための積立が、生きている人を支え始めた

ジンバブエの葬儀組合は、20世紀初頭の植民地時代にまでさかのぼる。近隣国、特に南アフリカへ出稼ぎに出た労働者たちが、遠く離れた土地で命を落としても「尊厳ある葬儀を」と、互いに資金を出し合ったのが始まりだ。この仕組みは今も色濃く残っている。ジンバブエでは医療保険を持つ人が1割に満たない一方、葬儀保険は最も広く普及した保険形態だと報告されている。都市部の世帯を対象にした調査では、葬儀組合が最も一般的な非公式の支え合いの形として挙げられている。

2023年、母の会員資格を引き継いだカスさんは、この組合が単なる葬儀費用の積立以上のものへと姿を変えつつあることに気づいた。食料品のまとめ買いプログラムや、小さな商売を始めるための融資まで扱うようになっていたのだ。「銀行の面倒もありません」とカスさんは言う。積立の回転から100ドルを受け取り、さらに30ドルを借り増して、ガスボンベと秤を購入。近所にガスを販売する小さな商売を始めた。「商売は順調です。自分で自分を養えています」。

アボカドの木の下で交わされる約束

組合の会員は、葬儀の積立にくわえて月10ドルの貯蓄クラブにも加入する。信頼できる会員や地域の住民は、この基金から借り入れることができる仕組みだ。「医療費や学費、事業資金のために借りてください」。基金の担当者は、アボカドの木の下に集まった会員たちにそう呼びかける。おそろいのTシャツと花柄のスカートをまとった女性たちが列をつくり、積立金を納めていく。

この基金には年20%という決して低くない利息がつく。組合の存続と会員同士の利益分配を支える仕組みである一方、借りた側には相応の返済負担がのしかかる。実際、ジンバブエ国内では、同種の非公式な貯蓄クラブ「ムカンド」をめぐって、資金を集めた幹事が突然連絡を絶ち、積立金ごと姿を消すという被害も報じられている。契約書も法的な保証もない、信頼だけを担保にした仕組みだからこそのリスクだ。葬儀組合は、死という誰にとっても避けられない出来事を核にしている分、匿名性の高い貯蓄クラブより地域の監視の目が働きやすいとされるが、無条件に安全というわけではない。

制度の外で、制度を支える

ジンバブエでは、働く人の3分の2以上がインフォーマル経済(税制や労働法の枠外で営まれる経済活動)に従事しているとされる。公的な社会保障網の外にいる人が多数派を占めるという現実の中で、政府自身も2024年、統計局(ZIMSTAT)と国家社会保障庁(NSSA)を通じて、こうした非公式な支え合いの実態を把握するための調査に乗り出した。葬儀組合という、制度の外側で生まれた仕組みが、制度そのものが手の届かない場所を支えている構図がここにある。

祈りによせて

葬儀組合が今も選ばれ続ける理由を、ある会員はこう語っている。「それは、隣人であり、教会の仲間だから」。会社や銀行には真似のできない何かが、そこにはある。死者を弔うための約束事が、いつしか生きている人の日々の暮らしを支える約束事へと広がっていく。その広がり方は、決して無条件の贈与ではなく、互いに利息を払い合いながら支え合うという、対等さを含んだ関係のようにも見える。誰かに一方的に助けられるのでも、独りで抱え込むのでもない、その中間にある道を、ハラレの人々は自分たちの手で作り続けている。お金は人を狂わせもすれば、こうして人と人を繋ぎ直す力にもなる。その天秤がどちらに傾くかは、お金をどう使うかより先に、お金をどんな関係の中に置くかで決まるのかもしれない。

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参考・引用元

  • AP通信「Some burial societies in Africa now focus on helping the living, too」(2026年6月):The Washington Times(AP配信)
  • Prism News「Zimbabwe burial societies expand into safety nets for daily survival」(2026年6月):prismnews.com
  • Al Jazeera「The hidden dangers of Zimbabwe's informal savings clubs」(2024年):aljazeera.com

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