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ケニア 環境

「もう、勝てない闘いかもしれない」— ケニア沿岸の女性たちが見つけた、もうひとつの生きる道

ケニア沿岸、マリンディの町から少し北へ。サバキ川がインド洋に注ぐこの場所で、女性たちの手によって小さなレストランとマングローブの苗床が形になりつつある。まだ完成していないその建物の中で、漁師のヌル・モハメドさんは静かに語った。「私は漁師であり続けようと闘ってきました。でも、もう勝てない闘いだと思います」。

浅瀬から魚が消えていく

この地域では長く、漁業が暮らしの土台だった。男性たちが海に出て魚を獲り、女性たちはその魚を買い付けて市場で売る「フィッシュモンガー」として生計を立ててきた。しかし近年、浅瀬に入り込む魚の数は年々減っている。沖合には産業用のトロール船が現れるようになり、近隣には中国資本の水産加工施設もできた。個人の小さな漁とは規模も力も違う競争相手だ。ボートが盗まれる被害も後を絶たない。「あの規模の力とは、とても張り合えません」とモハメドさんは言う。

マングローブと、もうひとつの収入源

そうした状況の中で、地元の女性30人が集まって作った自助グループ「サミト・ウィメンズ・グループ」が、新しい生計の柱を育て始めている。代表を務めるベアトリス・ムワニロさんは、未完成のレストランとマングローブ再生センターの前でこう語った。「私たちは時代の変化に適応しなければなりません。浅瀬に入ってくる魚の数は年々減っています。別の収入源がなければ、家族を養えません」。

グループが育てているのは、レストラン経営と、マングローブの苗を育てて植える活動の両方だ。マングローブは魚介類の産卵場所や稚魚の隠れ家になるほか、津波や高潮から沿岸の集落を守る役割も担う。目先の収入だけでなく、いずれ魚が戻ってくるかもしれない海そのものを育てる試みでもある。

海の向こうからの支援と、残された問い

この苗床とレストランの建設を後押ししたのは、「ReSea(リージェネレイティブ・シースケープス)」という国際プログラムだ。カナダ政府の気候資金を財源に、カナダのNGOミッション・インクルージョンと国際自然保護連合(IUCN)が実施し、ケニア・タンザニア・モザンビーク・コモロ・マダガスカルの沿岸コミュニティ約35万人を対象としている。ケニア国内ではキリフィ県の3地域、約8万人が対象とされる。建設された施設や機材は、サミト・ウィメンズ・グループのような地元組織の所有物として引き渡される仕組みで、支援が終わった後も地域に残る形を意図しているという。

ただし、この事業がカナダの気候変動対策予算という外部の資金枠組みに支えられていることも事実だ。運営組織側は「地域主導」「共創」を強調するが、数千万カナダドル規模の予算のうち、実際にどれだけが漁村の女性たちの手元に届く形で使われているのかは、公開された資料だけでは十分に見えてこない。ケニア政府の担当閣僚も立ち上げの場で「啓発ワークショップより、実際に使える道具に資金を回すべきだ」と釘を刺しており、支援のあり方そのものが、支援する側・される側の双方で問われ続けている。

祈りによせて

「もう勝てない闘い」と口にしながらも、モハメドさんやムワニロさんは漁を完全に手放したわけではない。魚を待つ手を止めないまま、その手でマングローブの苗を植え、レストランの壁を塗る。ひとつの生業に頼り切らない、もうひとつの時間の層を自分たちの手で編もうとする姿は、海の変化そのものへの答えというより、変化にどう向き合うかという問いへの、彼女たちなりの応答のように見える。

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参考・引用元

  • AP通信「As East Africa's oceans change, coastal women build new livelihoods」(2026年7月):Yahoo News(AP配信)
  • IUCN「ReSea Project Launched to Strengthen Coastal Communities in Kenya」:iucn.org
  • ミッション・インクルージョン「ReSea」事業概要:missioninclusion.ca
  • ケニア通信社「Sh750 million Blue Economy project is launched in Kilifi」:kenyanews.go.ke

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