現在の祈りの総数は

マラウイ 環境

村の屋根に灯る光——マラウイ・カサクラ村、全戸ソーラーの物語

マラウイの首都リロングウェから約90キロ。トウモロコシや豆を育てる農村カサクラ村では、日が沈むと長らく闇が訪れていた。子どもは灯りの下で勉強できず、店は早じまいし、夜の往来は危うい。だが今、この村のおよそ9,000世帯すべての屋根に、小さな太陽光パネルが載っている。送電網ではなく、村人自身が運び、灯し、守る電気が、暮らしの時間を夜へと延ばし始めた。

https://news.mongabay.com/2025/10/in-malawi-a-rural-community-shines-bright-with-100-solar-power-milestone/

ロウソクと灯油の先へ

マラウイで安定的に電気を使える人は、2024年時点で人口の約26%にすぎない。国土に広く散らばる農村まで送電網を延ばすのは、費用も時間もかかり、現実的でない地域が多い。そのため何百万人もの人々が、日没後はロウソクや灯油ランプ、電池式のトーチに頼ってきた。これらは高くつき、煙は健康を損ない、火事の危険もある。灯りが乏しければ、子どもの学びも、夜の商いも、人のつながりも先細る。

この状況を変えようと、分散型の再生可能エネルギー——ソーラーランタン、家庭用太陽光、ミニグリッド——が急速に広がっている。なかでも象徴的なのが、英国を拠点とする慈善団体ソーラーエイド(SolarAid)がカサクラ村で進めてきた試みだ。同団体は2006年、英国の太陽光企業ソーラーセンチュリーを母体として設立され、「灯油ランプの追放」を一貫して掲げてきた。煙による健康被害、家計の圧迫、温室効果ガス——その三重の害をなくすことが原点にある。

同団体の発想の特徴は、無償でモノを配るのではなく「自走する市場」を育てることにある。2008年には社会的企業サニーマネー(SunnyMoney)を立ち上げ、12〜15ドルほどの手頃な小型ランプを分割払いで届ける仕組みを広げてきた。カサクラ村の「ライト・ア・ビレッジ」計画は、その延長線上にある実証実験だ。一つの村の全世帯に確実に灯りを行き渡らせ、しかも事業として自立して回り続けられるか——それを確かめることが狙いだった。「遠隔で低所得の地域だからこそ、ここで仕組みが成り立つなら、ほかの土地にも広げられると考えました」。同団体マラウイ責任者のブレイブ・モニエ氏はそう語る。資金を出した英国のターナー・カーク・トラストは、この計画に「失敗する許可」を与えたという。自由に試し、つまずいてよい——その後押しのもとで、4年をかけて村の全戸に太陽光発電システムが行き渡った。

「サービスとしての電気」という発想

各家庭に設置されるのは、屋根のパネル、リン酸鉄リチウム(LFP)電池のハブ、携帯を充電できるUSB端子、そしてチューブライトとLEDランプ二つ。テレビやバリカンなど電力を使う機器向けの拡張キットも選べる。村人は週に約40セント相当を支払って電気を使う。支払いが滞れば、システムは自動的に止まる仕組みだ。

この「サービスとしての電気(energy as a service)」という考え方が肝になっている。仮に同等の設備を自前で買えば最大150ドルほど。年間の現金収入が200ドルに満たない農家にとっては、とても手の届く額ではない。だからこそ、初期費用を負わせず、少額を払い続ける形にした。集めた料金は、地元の顧客担当者への支払いや設備費の回収に充てられ、その資金がまた次の村へと事業を広げる原資になる。ソーラーエイドは設置や保守のために地元の50人を訓練し、雇用も生んだ。

変化の担い手には、女性たちの姿も目立つ。ソーラーエイドは「マイ・ワラズ(Mayi Walas=チチェワ語で『輝く母たち』)」と呼ぶプログラムで、農村の女性起業家を育ててきた。村の貯蓄・貸付グループと連携し、無利子でソーラーランプを仕入れて売る仕組みだ。同団体が伝える現場の語りによれば、グループで助け合いながら商いを続け、子どもを学校に通わせ、わら火に頼っていた暮らしから抜け出した女性たちがいるという。「お客さんが追いかけてきたんです。私たちの性別なんて気にもとめずに」——団体の記録には、そんな女性の言葉も残されている。

灯りがもたらすものは、単なる明るさではない。夜に勉強できる時間、暗くなっても開けていられる店、携帯電話の充電やモバイルマネー、夜道の安全。サブサハラ・アフリカでは保健施設の約75%が安定した電力を欠くとされるが、灯りが届けば、出産が暗闇の中で行われることも減っていく。一つひとつは小さな灯りでも、積み重なれば暮らしの土台が変わる。

もっとも、この灯りに影がないわけではない。最大の課題は、使い終えた電池の行方だ。マラウイにはまだ太陽光設備の安全な廃棄を定める規制がなく、とりわけ鉛蓄電池の非公式なリサイクルは、鉛を環境に漏らし、作業者や周囲の健康を脅かすと研究者が警告している。カサクラ村のシステムは毒性の低いLFP電池を使い、団体は古い電池を回収して将来のリサイクルに備えるとするが、国内に再生の仕組みはまだない。さらに、低所得層向けの設備を大量に輸入するための資金や外貨の確保も、事業を他地域へ広げるうえでの壁として残る。希望の灯りを本物に育てるには、こうした地道な課題と向き合い続ける必要がある。

祈りによせて

灯りは、人がその日を終え、また次の日へと向かうための、ささやかな希望のかたちです。カサクラ村の屋根に灯る小さな光は、誰かが遠くから運んできた恩恵ではなく、村の人々自身が支払い、手入れし、隣人に手渡してきた灯りでした。子どもが本を開き、母たちが肩を寄せて商いを語り、夜道を歩く足取りが少し軽くなる——そのひとつひとつに、暮らしを諦めない人の意志が宿っています。世界には、まだ日没とともに闇に沈む土地が数多くあります。すべての家に等しく灯りが届き、その光のもとで安心して眠り、学び、語らえる夜が訪れますように。

マラウイの人々のために祈りを捧げる方は、こちらのページへどうぞ。
🕊️ マラウイのために祈る — 祈りのワールドツアー



祈りのワールドツアー・関連ページ


参考・引用元

-マラウイ, 環境
-, , , ,