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アルジェリア ヒューマンストーリー

自分たちの村は、自分たちで — アルジェリア・カビリアに息づく助け合い

アルジェリア北部、カビリアの山あいの村。週末になると、住民が三々五々、道具を手に集まってくる。ある者は道の落ち葉を掃き、ある者は公共の泉を直し、ある者は花壇に苗を植える。指示を出す役所の人間はいない。何をするかは、前もって開かれた村の総会で、住民自身が決めた。報酬はない。これが「ティウィザ(トゥイザ)」——お金ではなく、志と信頼で回る、村ぐるみの助け合いだ。そしてこの古い営みは、いま衰えるどころか、若い世代の手で新しく息を吹き返している。

kabylia houses
Image by Aksel Mazigh from Pixabay

お金でなく、「ニフ」で回る助け合い

ティウィザ(アラビア語ではトゥイザ、「助ける」を意味する言葉に由来する)は、北アフリカ先住民アマジグ(ベルベル)の社会に根ざした相互扶助の仕組みだ。家を建てる、オリーブを摘む、道を通す、弱き者を支える——一人では手に負えない仕事を、村が順番に分かち合う。お金も証文も介在しない。助けを受けた人に法的な返済義務は生じないが、受けた側は「ニフ」と呼ばれる面子・自尊のゆえに、いつか必ず返す。冬になれば一メートルを超える雪で孤立する村も多く、「役所の助けを待ってはいられないから、自分たちで助け合う」。その決めごとを担ってきたのが、古くから続く村の合議「タジュマート」である。

「村委員会」という、生きた自治

この仕組みは、過去の遺物ではない。今日のカビリアでは、多くの村が「村委員会(コミテ・ドゥ・ヴィラージュ)」——近代化されたタジュマート——によって自らを治めている。委員は住民の互選で選ばれ、各世帯が月に150ディナールほどを出し合い、会計係が監査のもとで管理する。資金は世帯の拠出に加え、フランスなどへ渡った同郷者からの寄付、集会所の貸し出しや村有のオリーブ・薪の収益でまかなう。運営の唯一の原則は、「すべては自発的な奉仕で行う」こと。飲み水の確保、ごみ処理、道路の補修、通りの美化——暮らしの問題を、住民が自分たちの手で解決していく。「まず総会で何をするかを決め、それから有志で作業を分担する」と、ある古参の委員は語る。

ジュルジュラ山塊を望む、人口約4,000人のティフェルドゥード村もその一つだ。ここでは若い世代が、先祖伝来の村の掟を、七か月におよぶ住民全員の討議を経て、現代の暮らしに合うよう作り直した。委員会の最年少メンバーの一人、カメルさんは言う——「これは参加型の民主主義であり、タジュマートの伝統そのものだ」。古い器に、若い活力が注がれた。役所に頼るのでなく、自分たちの村を自分たちで治める。その手応えが、人々を動かしている。

この流れをさらに広げたのが、2006年に構想された「最も美しく清潔な村」を競う年次コンクール(アイサット・ラバ賞)だ。清潔さ・環境・ベルベルの誇りを軸に村々が腕を競い、2024年の第11回には、実に83もの村が参加した。世界保健機関(WHO)の担当者も、その取り組みを称賛したという。そして注目すべきは、このコンクールがもたらした最初の変化が、「消えかけていた助け合いの慣行——ティウィザの再活性化」だったことだ。競い合うという「口実」が、眠っていた共同の力を呼び覚ました。助け合いは、失われつつある骨董品ではなく、いま現に太くなりつつある生きた営みなのだ。

生きているからこそ、抱える課題

もっとも、光があれば影もある。村の栄誉は観光の脚光を呼び、優勝した村には国内外から客が訪れる。人が集うのは喜ばしいが、助け合いが「見せるための行事」へ傾けば、その核心はかえって薄れかねない。研究者は、こうした営みを国や広域の制度、観光の枠に乗せて大きくしようとするとき、標準化が村ごとの自律を上回り、生きた連帯が形だけの民俗行事に変質する危うさを指摘する。都市への人口流出のなかで、若い担い手をどう保ち続けるかという課題も残る。生きた助け合いを生かすのは、外からの後押しではなく、あくまで村の内側から湧く必要と意思なのだ。

祈りによせて

私たちの暮らしは、いつのまにか、ほとんどのものをお金に換えて成り立つようになった。カビリアの村々が今も実践しているのは、その外側に、確かに別の関係の層があり得るということだ。労働を貨幣にせず、志と信頼で回す時間。誰か遠くに委ねるのでなく、分かち合う者たちで決め、自分たちの村を自分たちの手で治めていく暮らし。それは古くて、けれど少しも古びていない。今日も総会を開き、道具を手に集まる人々のために。自分たちの行く末を、自分たちの手に握り続けようとする人々のために、静かに祈りを捧げたい。希望を持ちながら、その希望に居着かないでいたい。

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参考・引用元

  • Jeune Afrique「Algérie : balade dans les villages autogérés de Kabylie」:jeuneafrique.com
  • France-Algérie Actualité「Les « villages les plus propres » de Kabylie en quête de tourisme durable」:france-algerie-actualite.fr
  • KabyleMag「Le concours du village le plus propre : un modèle inspirant salué par l’OMS」(2024):kabylemag.com
  • Algerie360「Concours du village le plus propre : le gagnant de la 11e édition」(2024):algerie360.com
  • Ghezal & Benchouat「From Tradition to Activism: Touiza as a Socio-Cultural Practice for Solidarity」Algerian Journal of Research and Studies (2026):asjp.cerist.dz
  • Mahdi Aridj Photography「Touiza: Volunteering in Kabylia」(2024):mahdiaridjphotography.com

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