カザフの草原には、言葉を持たない音楽がある。ドンブラという二弦の楽器が奏でる「キュイ」だ。物語も、嘆きも、英雄の記憶も、弦の震えだけで伝える。その調べを、いま若い世代が、いったん断ち切られた歴史の向こうから手繰り寄せている。担い手の一つが、エスノフォークのアンサンブル、HasSaK(ハッサク)だ。 一世代が、まるごと消えた HasSaKの音楽を理解するには、まずカザフが何を失ったかを知る必要がある。1930〜33年、ソ連の集団化が引き起こした人為的な飢饉「アシャルシュリク」で、約150万人——カザフ人口の ...