一杯のコーヒーが、人を故郷にとどまらせることができる——そう聞いたら、大げさだと思うだろうか。メキシコ南部チアパス州のある村では、それが現実になった。コーヒー価格の暴落で男たちが次々と村を去り、北の国境やアメリカへ消えていった2000年前後。残された人々は、誰かに助けられるのを待つのではなく、自分たちでコーヒーを売る道を選んだ。彼らが掲げた理念は、静かだが力強い。「故郷にとどまる権利」である。 集会に、女性しかいなくなった村 標高の高い火山の斜面に抱かれたサルバドール・ウルビナ村は、19世紀末からコーヒー ...