雪をいただいたアトラス山脈を背に、モロッコの小さな村アクリッシュがある。マラケシュから車で30分ほどのこの村に、樹齢を重ねた果樹の苗が並ぶ温室がある。世話をするのは地元のムスリムの人々。けれどもその苗床が広がるのは、700年の歴史を持つユダヤ教徒の墓地に隣り合う土地だ。信仰の異なる人々が、一本の苗木を間にして手を取り合う——そんな営みが、静かに続いている。 「命の家」と呼ばれる場所 かつてモロッコには25万人ものユダヤ教徒が暮らしていた。15世紀、スペインを追われた人々が北アフリカのこの地にたどり着き、以 ...