サハラ砂漠の南、サヘルと呼ばれる半乾燥地帯。長く湾曲した一本角を持つ白いレイヨウ、シミタオリックスは、横から見ると角が一本に重なって見えることから「ユニコーンの原型」とも語られてきた。その姿は1980年代に野生から完全に消えた。だが2025年の今、チャド中部の保護区では、首輪も標識もつけない——つまり生まれたときから完全に野生の——オリックスの群れが草原を歩いている。砂漠に伝説がよみがえった物語だ。 消えた角、残された記憶 かつてサヘルには10万頭ものシミタオリックスが暮らしていたと推定される。だが20世 ...